未経験からオンライン秘書を目指すとき、実務の経歴がなくても依頼主に見せられる材料を作る方法があります。それが業務サンプルです。日程調整のメール案、リサーチ表、議事メモ、請求書のチェックリストといった、実際の仕事に近い成果物を、すべて「仮の例」として自分で作り、実在の顧客情報を一切使わずに見せられる形にまとめます。この記事では、その作り方、AIで下書きして人が確認する箇所、ポートフォリオでの見せ方を順に説明します。
先に結論を書きます。サンプルは数を増やすより、1点ごとに「何を頼まれた想定か」「どう進めたか」「どこを人の目で確かめたか」を添えて、読む人が仕事の進め方まで想像できる形にすることが大切です。AIは下書きを早く用意する道具として使い、事実の確認、数字の照合、相手に伝える内容の最終判断は人が担当します。この役割分担を、サンプルの中でも見える形にしておくと、依頼主に安心感のある資料になります。
この記事で扱うのは、実務経験がない段階で「自分はこういう手順で仕事を進める人です」と説明するための材料の作り方に絞ります。サンプルの中身はすべて仮の例で、実在の人物、会社、取引先の情報は含めません。
オンライン秘書の仕事の全体像から知りたい場合は、AIオンライン秘書の仕事内容と最初に選ぶ一業務|経験・時間・確認者で棚卸しもあわせて読むと、どの業務のサンプルから作るかを決めやすくなります。入門の記事は始め方のカテゴリ、依頼主との実務は依頼主との実務のカテゴリにまとめています。
業務サンプルが未経験者の最初の資料になる理由
業務サンプルとは、実際の依頼を想定して自分で作った成果物と、その作り方の説明をひとまとめにした資料です。実務の経歴がない人が、仕事の進め方を見てもらうために使います。
依頼主がオンライン秘書に仕事を任せるかどうかを考えるとき、知りたいのは、頼んだことを頼んだとおりに、間違いなく返してくれるかどうかです。経歴や肩書きは判断材料の一つですが、それだけで進め方まで分かるわけではありません。サンプルがあれば、文面の丁寧さ、表の見やすさ、確認の細かさといった、仕事の質を実物で見てもらえます。経験がない人にとっては、自分の言葉で説明するよりも、実物を見せたほうが伝わりやすい場面が多いと考えられます。
もう一つの理由は、自分自身にとっての練習になることです。サンプルを作る過程で、依頼の曖昧な部分をどう質問するか、AIの出力のどこが間違いやすいか、確認の観点は何かが具体的に見えてきます。実際の依頼を受ける前に、失敗しても誰にも迷惑がかからない場所で手順を試せる点が、サンプル制作のいちばん実務的な利点です。
ここでいう「サンプル」は、完成度の高いデザインや長い資料を指しません。1ページから2ページ程度で、依頼の想定、成果物、確認の記録が揃っていれば十分に役目を果たします。長く作り込むほど、仮の例なのか実在の情報なのか見分けにくくなり、かえって依頼主を不安にさせることがあります。短く、分かりやすく、仮の例と明示する。これを基本方針にします。
サンプルを作る前に決める三つの約束
三つの約束とは、実在の情報を使わないこと、すべてに「仮の例」と明記すること、AIに入力する内容を事前に決めておくことです。この三つを先に決めておくと、作る途中で迷いが減ります。
一つ目は、実在の顧客情報を使わないことです。過去の勤務先、知人の会社、SNSで見かけた取引先などの実名、メールアドレス、金額、日程を、サンプルの素材にしないでください。自分の記憶にある実際の依頼をそのまま写すと、守秘の問題が生じるおそれがあります。サンプルの題材は、すべて自分で組み立てた架空の状況にします。会社名や氏名が必要な場面は「依頼主(仮)」「取引先B(仮)」のような呼び方で置き換えます。
二つ目は、「仮の例」と明記することです。タイトル、各ページの見出し、成果物の近くに、仮の例であることを毎回書きます。小さな注記でも構いませんが、見落とされない位置に置きます。仮の例と書いていない書類は、実在の依頼の成果物だと受け取られる可能性があります。ここは過剰なくらい丁寧にして問題ありません。
三つ目は、AIに入力する内容の線引きです。サンプルの制作でも、AIツールに入れる内容は、架空の状況の文章に限ります。自分や知人の個人情報、過去の仕事の資料を貼り付けて下書きを作らないでください。AIへの入力の考え方は、後の章で個人情報保護委員会の資料にも触れながら整理します。
この三つを守ると、サンプルを依頼主に見せたときに、どこまでが仮でどこからが実際の情報かを聞かれることがなくなります。質問される余地を減らすことも、サンプルの品質の一部です。
サンプルにする業務の候補を並べて選ぶ
サンプルにする業務は、依頼主が頼みやすい、作る手間が小さい、確認の観点を示しやすい、の三点で選びます。最初は2点から4点に絞ると、一つずつ丁寧に作れます。
オンライン秘書の仕事は幅広く、全部をサンプルにしようとすると中身が薄くなります。次の表は、この記事で扱う4種類のサンプルを、材料、AIの出番、人が確認する点で比べたものです。自分の興味と、これから受けたい依頼の方向に合わせて選んでください。
| サンプルの種類 | 作るときの材料(仮の例) | AIに任せやすい部分 | 人が確かめる部分 |
|---|---|---|---|
| 日程調整のメール案 | 架空の依頼主の予定表と、取引先Bからの打ち合わせ依頼 | 丁寧な言い回しの下書き、候補日の並べ方 | 日付と曜日の一致、候補日が空いているか、依頼主の方針との整合 |
| リサーチ表 | 架空の調べ物の依頼と、公開されている公的ページ | 調べる観点の洗い出し、表の枠づくり | 数値や制度の内容が出典と一致しているか、出典のリンクが開くか |
| 議事メモ | 自作した架空の会議のやり取り(文章) | 発言の要約、決定事項と宿題の仕分け | 発言していないことが書かれていないか、担当者と期限の取り違え |
| 請求書チェックリスト | 自作した架空の請求書の項目一覧 | 確認項目の洗い出し、チェック表の雛形 | 金額の計算、宛名、日付、依頼主のルールとの照合 |
この表の「人が確かめる部分」は、4種類のすべてに共通して、AIが間違えやすい部分を中心に並べています。AIの下書きは読みやすい文章になっていても、日付や数字、固有名詞の取り違えが混ざることがあります。ここを自分の目で確かめる姿勢を、サンプルの中で見せることが、依頼主の信頼につながります。
選び方の目安として、事務やメールの仕事が好きなら日程調整とチェックリスト、調べものが得意ならリサーチ表、聞き取りとまとめが得意なら議事メモから始めるのが取り組みやすい流れです。LINEの運用など別の領域の仕事を考えている場合は、LINE運用代行の始め方|請け負う業務・権限・契約・料金プランの確かめ方で、その領域の実務を確認してください。
サンプル1:日程調整のメール案の作り方
日程調整のメール案のサンプルは、依頼主の方針を受け取り、取引先に送る候補日の文面を下書きし、送信前の確認メモを添えて渡す一連の流れを見せるものです。
最初に、仮の依頼文を自分で書きます。たとえば「依頼主(仮)が、取引先B(仮)から打ち合わせの日程を聞かれています。10月21日(水)、10月22日(木)、10月23日(金)の午後が空いています。1時間で、オンライン会議にしたいです。丁寧な文面の案をお願いします」という内容です。サンプルには、この仮の依頼文を冒頭に載せ、何を頼まれた想定なのかを示します。
次に、AIで文面の下書きを作ります。AIには、仮の状況(候補日、所要時間、オンライン会議であること、丁寧な文体にしたいこと)だけを伝えます。出てきた下書きは、そのまま使わず、自分で読んで直します。直した理由も、サンプルの下に短く書いておきます。たとえば「AIの下書きは候補日を『来週』と書いていたので、日付を明記する形に直した」といった記録です。この記録が、人が確認したことの証拠になります。
確認メモは、サンプルの中でいちばん目立たせたい部分です。仮の例として、次のような項目を渡します。
- 候補日の日付と曜日が一致しているか(10月21日が水曜日、22日が木曜日、23日が金曜日)
- 時間帯は依頼主の希望(午後、1時間)どおりか
- 会議の方法(オンライン)が文面に入っているか
- 宛名と署名が仮の名称になっているか
- 送信は依頼主が行う前提で、下書きとして渡しているか
メール返信全般の考え方は、AIでメール返信文の案を作る手順|依頼主と決める範囲・確認項目と納品例で詳しく整理しています。サンプルを作るときは、その記事の範囲と権限の考え方を参考に、この想定でどこまでを秘書が担当し、どこから依頼主が判断するのかを1行で書き添えると、実務の理解が伝わります。
サンプル2:リサーチ表の作り方
リサーチ表のサンプルは、仮の調べものの依頼に対し、出典付きで整理した表と、確認した人の記録を見せるものです。AIの出力は出典と照合して初めて使います。
リサーチのサンプルは、題材選びが肝心です。仮の依頼として「依頼主(仮)が、在宅で働く人向けの勉強会を企画しています。個人情報を扱うときに、事業者が確認しておきたい公的な資料を、3つ程度まとめてほしい」といった内容を置くと、公的ページを出典にする練習になります。数値や制度の説明を含む題材は、一次資料で確かめる作業が見せやすいためです。
表の列は、「項目」「内容の要点」「出典のページ名」「出典のURL」「確認した日」「確認の方法」の6つを基本にします。AIには、調べる観点の候補や表の枠を出してもらい、内容そのものは自分で公的ページを開いて確かめて書き込みます。AIが挙げた内容をそのまま表に入れてしまうと、存在しないページや古い情報が混ざるおそれがあります。サンプルの下に「AIが挙げた観点のうち、公式ページで確認できたものだけを表に入れた」と書いておくと、確認の姿勢が伝わります。
確認した日の列は、省略しないでください。ウェブページは更新されることがあるため、いつの時点の内容かが分からないと、依頼主が使うときに不安が残ります。リサーチの進め方、出典付き資料の作り方はオンライン秘書のリサーチ業務|出典付き資料の作り方と生成AIの確認手順に詳しくまとめています。サンプルでは、その手順を縮小した形で、1枚の表に収めて見せると読みやすくなります。
注意点として、サンプルに載せる出典は、実在の公的ページで、実際に自分が開いて内容を確認したものだけにします。確認していないページを出典として並べると、サンプルそのものが信頼を損ねる原因になります。
サンプル3:議事メモの作り方
議事メモのサンプルは、自作した架空の会議のやり取りから、決定事項、宿題、担当者、期限を整理して見せるものです。発言の要約をAIに任せる場合も、事実の照合は人が行います。
議事メモの素材は、実際の会議の録音や書き起こしを使えません。守秘の問題があるためです。そこで、サンプル用に架空の会議のやり取りを、文章で自作します。長さは10行から15行程度で十分です。たとえば「依頼主(仮)、担当C(仮)、担当D(仮)の3人が、来月のイベントの準備を話し合った」という想定で、会話の流れを書きます。この自作の会話文そのものも、サンプルに載せておくと、メモと見比べられます。
メモの型は、「日時」「参加者(仮)」「決まったこと」「宿題と担当」「次回までの期限」「保留になったこと」の六つの欄が基本です。AIには、自作の会話文を渡して、この型に当てはめた下書きを作ってもらいます。出てきた下書きを、元の会話文と一行ずつ照らし合わせて、次の点を確かめます。
- 会話に出ていない決定事項が書かれていないか
- 担当者の名前が入れ替わっていないか
- 期限の日付が会話と一致しているか
- 保留にしたことが、決まったことのように書かれていないか
議事メモで特に起こりやすいのは、保留の内容が決定として書かれてしまう間違いです。AIは文章をきれいにまとめる傾向があるため、曖昧だったやり取りが、はっきりした結論のように見えることがあります。サンプルの下に「保留の項目を決定に混ぜていないか確認した」と一行添えると、実務で重要な観点を理解していることが伝わります。
サンプル4:請求書チェックリストの作り方
請求書チェックリストのサンプルは、架空の請求書の項目をもとに、確認する観点を表にしたものです。AIで項目を洗い出し、金額や宛名の照合は人が行います。
請求書の事務は、実際の金額や取引先の情報を扱うため、サンプルでは完全に架空のデータで作ります。仮の請求書として、「宛名(仮)」「請求日」「支払期日」「品目」「数量」「単価」「合計」などの項目を持つ一覧を自分で作ります。金額は、確認の練習のために、手計算で合計が合うかどうかを見られる単純な数字にします。実在の会社の請求書の書式や金額を写すことは避けます。
チェックリストは、AIで観点を洗い出してから、自分で整理します。サンプルでは、次の表のように、確認する観点、確認の方法、間違いがあった場合の戻し先をまとめます。
| 確認する観点 | 確認の方法 | 間違いがあった場合 |
|---|---|---|
| 宛名の表記 | 依頼主から受け取った取引先の正式名称と照合する | 依頼主に確認して直す |
| 請求日と支払期日 | 日付の前後関係と、依頼主の支払ルールに合うかを見る | 依頼主に確認して直す |
| 品目と数量 | 依頼主の納品記録と照らし合わせる | 依頼主に確認して直す |
| 単価と合計 | 電卓などで手計算し、書類の合計と一致するか見る | 計算を直して差分を記録する |
| 税込・税抜の表記 | 書類の中で表記が統一されているかを見る | 依頼主のルールを確認する |
この表は5つの観点を挙げています。AIにチェックリストの案を作らせると、観点が10個以上並ぶこともありますが、サンプルでは多すぎると読みにくくなります。依頼主が実際に見落としやすい観点に絞り、残りは「依頼主のルールに合わせて追加」とすると、柔軟さも示せます。経費の精算や請求書事務の進め方はAIで請求書・経費精算の事務を進める手順|任せる範囲と確認箇所・保存のルールで扱っています。サンプルを作るときは、その記事の確認箇所の考え方に沿って項目を決めると、実務との橋渡しになります。
AIで下書きし人が確認する箇所の分け方
下書きはAIに任せ、確認は人が行う、という分け方がサンプルの基本です。AIが得意な整形と、人が担当する事実の照合を、成果物の中で見分けられるようにします。
4種類のサンプルに共通する考え方を、一度整理します。AIは、文章の整形、観点の洗い出し、表の枠づくり、言い回しの調整といった作業が得意です。一方で、日付と曜日、数値、固有名詞、出典の内容といった事実は、間違いが混ざる可能性があります。そのため、確認の担当は人にしておく必要があります。次の表は、サンプルの中で、AIの担当と人の担当をどう書き分けるかの例です。
| 作業の段階 | AIに任せる使い方 | 人が担当すること | サンプルに残す記録 |
|---|---|---|---|
| 依頼の整理 | 依頼文の要点を箇条書きにする | 依頼の意図と不足情報を判断する | 不足していた情報の質問リスト |
| 下書きの作成 | 文面や表の枠を作る | 内容を読み、直す | 直した箇所と理由 |
| 事実の照合 | 確認項目の一覧を出す | 日付、数値、出典を一つずつ照合する | 確認した日と方法 |
| 最終の判断 | 判断材料を並べる | 依頼主に渡すかどうかを決める | 依頼主に確認してほしい点 |
この表のとおり、AIの出番は下書きと整理に置き、事実の照合と最終判断は人が担当します。サンプルの下に、この4段階を短く書いておくと、依頼主は、AIをどう使う人なのかが一目で分かります。AIを使っていることを隠す必要はありません。むしろ、使い方と確認の仕方を説明できることが、信頼の材料になります。
なお、依頼主によっては、AIを使うこと自体を望まない場合や、使ってよい範囲に決まりがある場合もあります。実際に依頼を受けるときは、AIを使うかどうか、使うならどのツールを使うかを、最初に依頼主と確認してください。契約や取り決めの考え方はAI事務の副業の始め方|受ける前に依頼主と決める7つの取り決めと確認先が参考になります。
生成AIに入力してよい情報の線引き
サンプル制作の段階では、AIに入力する内容を架空の状況の文章だけに限ります。実際の依頼を受けた後は、依頼主の了承と、各AIサービスの公式ヘルプで確認した範囲に従います。
サンプルを作る段階では、先に書いたとおり、架空の状況だけをAIに入れます。それでも、練習として、個人情報の扱いの考え方を知っておくと、実際の依頼に進んだときに役立ちます。個人情報保護委員会は、令和5年6月2日に生成AIサービスの利用に関する注意喚起等を公表しています。個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含む指示文を入力する場合には、特定された利用目的を達成するために必要な範囲内であるかを十分に確認すること、とされています。
この注意は、個人情報取扱事業者に向けたものです。自分が個人情報取扱事業者に当たるかどうかは、事業の形によって異なります。業務を受託する場合は、依頼主が事業者として何をAIに入れてよいと考えるかを確認する必要があります。ここでは法律の適用を断定せず、実際の依頼では依頼主や専門家に確認する、という姿勢を示すにとどめます。
各AIサービスのデータの扱い、たとえば入力内容が学習に使われるかどうか、保存される期間はどのくらいかは、サービスによって異なり、設定で変わる場合もあります。使うサービスの公式ヘルプで、その時点の説明を確認してください。この記事では特定のサービスの機能や仕様には触れません。サンプルの中に、AIの使い方を説明するときも、「使うサービスの公式ヘルプで入力内容の扱いを確認した」と書き、具体的な仕様の数字は書かないほうが、内容が古くなりにくいです。
ポートフォリオでの見せ方
ポートフォリオは、サンプルを1点ずつ、依頼の想定、成果物、進め方、確認の記録の順に並べた資料です。読む人が数分で仕事の進め方をつかめる構成にします。
サンプルが出来上がったら、ひとつの資料にまとめます。形式はPDF、ノートのページ、スライドなど、依頼主が開きやすいものを選びます。1点ごとに1ページを使い、同じ構成で並べると、比較しやすくなります。次の表は、1ページの中身の例です。
| ページの位置 | 書く内容 | 書き方のポイント |
|---|---|---|
| 上部 | タイトルと「仮の例」の表示 | 実在の依頼ではないことが一目で分かるようにする |
| 依頼の想定 | 仮の依頼文を2行から3行で | 誰が何を頼んだ想定かを書く |
| 成果物 | メール案、表、メモなどの実物 | 全体を載せ、分かりにくい箇所には注記を付ける |
| 進め方 | AIで下書きした部分と、人が直した部分 | 直した理由を一言で書く |
| 確認の記録 | 照合した項目と確認の方法 | 日付、数値、出典の確認を中心に |
| 下部 | 依頼主に確認してほしい点 | 実務の流れを想定した引き継ぎの形にする |
ポートフォリオの最初のページには、自己紹介を短く置きます。経験がないことを隠す必要はありませんが、書けない経歴を書く必要もありません。「これから実務を始める準備として、4種類の業務サンプルを作りました」といった、事実だけを書きます。
また、使えるAIツールの名前を並べるより、どの場面でAIを使い、どの場面で人が確認したかを書くほうが、依頼主の知りたいことに近づきます。ツールの名前は、聞かれたときに答えられれば十分です。
依頼主に見せる前の自己点検
自己点検とは、サンプルを人に見せる前に、実在情報の混入、仮の例の表示、確認の記録、誤字を一つずつ見直す作業です。公開前に一度は通します。
サンプルが仕上がったら、人に見せる前に自分で点検します。点検は、次の6項目の表を使って、1項目ずつ「はい」「いいえ」で確認するのが簡単です。
| 番号 | 点検の項目 | 見るところ |
|---|---|---|
| 1 | 実在の会社名・氏名・メールアドレスが入っていないか | 成果物の本文、注記、ファイル名、画像 |
| 2 | 「仮の例」の表示がすべてのページにあるか | 各ページの上部と成果物の近く |
| 3 | 日付と曜日が合っているか | メール案、議事メモ、請求書の日付 |
| 4 | 出典のリンクが開き、内容が一致しているか | リサーチ表の出典欄 |
| 5 | AIの下書きから直した箇所を記録したか | 進め方の欄 |
| 6 | 誇張に読める表現がないか | 自己紹介と全体の文章 |
ファイル名や画像の中の文字も見落としやすい場所です。たとえば、スクリーンショットに実在の通知やアカウント名が写り込んでいないかを確認してください。パソコンのファイルのプロパティに、作成者名などが残る場合もあるため、書き出す前に確認する習慣を付けると安心です。
可能であれば、家族や知人など、第三者にも一度読んでもらうと、自分では気づかない分かりにくい表現を見つけられます。その際も、仮の例として作ったものであることを伝え、実在の情報は含まれていない状態で見てもらいます。
サンプルを育てる進め方と次の一歩
サンプルは一度作って終わりではなく、依頼や学びに合わせて1点ずつ足し、見直すものです。数を増やすより、1点の質を高めるほうが先です。
最初の4点が出来た後は、折を見て見直す時間を取ります。見直す観点は、確認の記録が具体的か、AIの使い方の説明が古くなっていないか、新しい業務の題材を足したいか、です。AIの機能や各サービスの説明は変わることがあるため、ポートフォリオの中に特定の機能を前提とした記述がある場合は、定期的に確認してください。
実際の依頼を受けるときは、最初の1つの業務に絞って始めるのが取り組みやすい方法です。最初に選ぶ業務の考え方は、前に紹介したAIオンライン秘書の仕事内容と最初に選ぶ一業務で整理しています。そこで選んだ業務に対応するサンプルを、ポートフォリオの最初に置くと、依頼主が見たいものを先に見てもらえます。
サンプルを見せた後の流れは、依頼主によって異なります。見せるだけで終わる場合もあれば、小さな依頼を試しに頼まれる場合もあります。どの場合でも、範囲、期限、確認の担当、連絡の方法を文章で確認してから始めてください。契約や取り決めの内容を整理しておくと、トラブルを避けやすくなります。
よくある質問(FAQ)
- Q1. サンプルは何点くらい作ればよいですか。
- 決まった数はありません。この記事で挙げた4種類のうち、これから受けたい業務に近い2点ほどから始め、1点ずつ丁寧に作るほうが、読む人に仕事の進め方が伝わります。数を増やすことより、確認の記録を具体的に書くことに時間を使ってください。
- Q2. 過去の仕事で作った資料を、固有名詞を伏せればサンプルにできますか。
- おすすめしません。固有名詞を伏せても、金額、日程、取引の内容から、元の会社が推測される場合があるためです。過去の勤務先の資料の扱いは、勤務先との取り決めによって異なるため、サンプルは最初から架空の状況で作るほうが安全です。
- Q3. AIを使って作ったことは、書いたほうがよいですか。
- 書いておくことをおすすめします。どの部分をAIで下書きし、どの部分を人が確認したかを説明できることが、依頼主にとっての安心材料になります。依頼主がAIの利用に条件を持つ場合もあるため、実際の依頼では事前に確認してください。
- Q4. サンプルを公開のSNSやブログに載せてもよいですか。
- 実在の情報を含まない仮の例であれば、載せること自体は可能です。ただし、載せる前に、前の章の自己点検の表で、実在の名称や写り込みがないかを確認してください。AIの出力をそのまま載せる場合は、使うサービスの利用規約で扱いを確認しておくと安心です。
- Q5. 会計や法律に関わる内容は、サンプルに入れてよいですか。
- 制度の説明を断定的に書くのは避けてください。請求書のサンプルでも、チェックの観点は「依頼主のルールに合わせて確認する」という形にとどめ、制度の判断は依頼主や専門家に確認する、という立場を示すほうが適切です。
- Q6. サンプルを見せれば、仕事の依頼が来ますか。
- 依頼につながるかどうかは、サンプルの出来だけでは決まりません。サンプルは、実務経験がない段階で、自分の進め方を説明するための資料です。依頼につながるかは、依頼主の事情や時期にも左右されます。
まとめ
未経験からオンライン秘書を目指すための業務サンプルは、日程調整のメール案、リサーチ表、議事メモ、請求書チェックリストの4種類から、受けたい業務に近いものを選んで作ります。すべて仮の例と明記し、実在の顧客情報は使いません。AIは下書きと整理に使い、日付、数値、出典、最終判断は人が確認します。
ポートフォリオでは、1点ごとに「依頼の想定、成果物、進め方、確認の記録」を同じ構成で並べ、確認した内容を具体的に書きます。書く内容は事実だけにします。次の一歩として、最初の1点を、1ページで作ってみてください。メールの返信文の進め方はAIでメール返信文の案を作る手順から読むと、最初のサンプルが作りやすくなります。
