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オンライン秘書のリサーチ業務|出典付き資料の作り方と生成AIの確認手順

オンライン秘書のリサーチ業務で信頼される資料を作る近道は、「調べた結果」だけでなく「どこで、いつ、誰が公表した情報か」を1件ずつ添えて納品することです。依頼者は資料を読んで判断しますが、出典が付いていなければ、その判断が正しい情報に基づいているのかを後から確かめられません。

この記事では、リサーチの依頼を受けたときに最初に確認すること、官公庁や企業の公式ページなど一次情報を優先して探す順番、生成AIを使う場合の役割分担と事実確認、出典と取得日の書き方、納品物の形、他者の文章を載せるときの引用ルールまでを、1本の流れとして整理します。納品物の例は、読み方を示すための仮の例です。

なお、この記事は案件の紹介や収入の見込みを約束するものではありません。報酬や単価は依頼者との取り決めで決まるため、ここでは扱いません。リサーチ業務の進め方と、資料の信頼性を保つ手順に絞って解説します。

目次

オンライン秘書のリサーチ業務とは何か

オンライン秘書のリサーチ業務とは、依頼者が判断や連絡の前に必要とする情報を、公開されている資料から集め、出典付きの資料にまとめて納品する仕事です。結論を決めるのは依頼者で、秘書は判断材料を確かめられる形にして渡します。

秘書的な業務の中でも、リサーチは「正しさ」が成果物の価値そのものになる仕事です。日程調整なら日付が合っているかどうかで確認でき、返信文案なら読めば違和感に気づけます。一方、調査資料は、書かれている内容が事実かどうかを依頼者が自分で一から調べ直さない限り、見た目だけでは判断できません。だからこそ、出典を添えて「確かめられる状態」で納品することが、この仕事の中心になります。

リサーチ業務の依頼は、たとえば次のような形で届きます。取引先の会社について公開情報を整理してほしい、新しいサービスを検討する前に関連する制度を調べてほしい、打合せ用に業界の動向を1枚にまとめてほしい、といったものです。どれも「調べて終わり」ではなく、依頼者が次に何をするかが決まっていて、その材料を求められています。

依頼者の目的が見えないまま調べ始めると、情報は集まっても、使われない資料になりがちです。最初の確認でゴールを揃えておくと、調べる範囲が絞られ、出典の選び方にも迷いにくくなります。まずは、自分が最初に引き受ける業務を何にするかを決めておきたい方は、AIオンライン秘書の仕事内容と最初に選ぶ一業務|経験・時間・確認者で棚卸しで、経験・時間・確認者の3つの軸から一業務を選ぶ方法を紹介しています。

根拠つき資料の定義:本文・参照元・取得日・確認状況の4点

出典付き資料とは、主張や数値の一つ一つに、情報の発行元、資料の名前、公表日または更新日、自分が確認した日、確認の状況が添えられた資料です。読み手が元の資料に戻って照合できることが条件です。

「出典あり」と書いてあっても、リンクが1本貼ってあるだけでは、資料としては不十分なことがあります。どの文がどのページの記述に基づくのか分からない、ページが後から書き換わったときに当時の内容が分からない、AIが作った文なのか公式の文言なのか区別できない、といった状態になるためです。そこで、本文に加えて次の4点を揃えます。

  • 本文:依頼者に伝えたい内容。公式の文言を写す部分と、自分で要約した部分を区別して書きます。
  • 出典:発行元の名称、資料の表題、URL。個人ブログやまとめサイトではなく、できるだけ発行元そのものを指します。
  • 取得日:自分がそのページを開いて確認した日。ページは更新されるため、いつ時点の内容かを残します。
  • 確認状況:公式ページの文言と照合済みか、これから照合するか。AIの出力をそのまま載せていないことも、ここで示します。

この4点を毎回同じ形で書くと、依頼者は資料を読むときの「見るべき場所」が決まり、確認の手間が減ります。秘書側にとっても、納品後に「この数字はどこから」と聞かれたときに、すぐ答えられる利点があります。

出典の書き方の具体的な型は、後半の「参照元の書き方と取得日の残し方」の節で表にまとめます。先に全体の流れを押さえたい場合は、次の節から順に読み進めてください。

依頼を受けたら最初に確認する7項目

リサーチ依頼の最初の確認とは、調べ始める前に、目的・読み手・範囲・期限・資料の形・使ってよい情報源・AIの利用可否の7つを依頼者とそろえる作業です。ここがそろうと、やり直しの多くを防げます。

調査の依頼文は短いことが多く、「この件について調べておいてください」の一文だけで届くこともあります。その文面のまま調べ始めると、依頼者が期待していた切り口と違う資料になりやすいため、先に次の7項目を確認します。

確認項目 聞く内容 決めずに進めたときに起きやすいこと
1. 目的 その資料を何の判断・連絡に使うか 集めた情報が判断に使えず、調べ直しになる
2. 読み手 依頼者本人だけか、取引先や社内にも見せるか 専門用語の量や出典の厳密さが合わない
3. 範囲 対象の地域・期間・分野、調べない範囲 調べる量が際限なく広がる
4. 期限 いつまでに、途中経過はいつ見せるか 方向違いに気づくのが遅れる
5. 資料の形 文書か表か、1枚か複数枚か、ファイル形式 形式の作り直しに時間を取られる
6. 使ってよい情報源 官公庁・企業公式のみか、報道や有料資料も可か 出典の質がそろわず、依頼者が使えない
7. AIの利用可否 依頼者の資料をAIサービスに入力してよいか 依頼者の情報が意図しない形で外部に渡る

7番目の「AIの利用可否」は、見落とされやすい項目です。依頼者から預かった資料や、依頼者の取引先の情報をAIサービスへ入力することは、依頼者の許可があるかどうかで扱いが変わります。この点は、後の「依頼者の情報をAIへ入力するときの線引き」の節で詳しく説明します。

確認した内容は、口頭で済ませずに文章で残します。チャットやメールの文面をそのまま保存しておくだけで十分です。「この範囲で、この形式で、この情報源を使う」と合意した記録があれば、後から「想定と違う」と言われたときも、どこで認識がずれたかを一緒に確かめられます。取引条件や納品物の範囲を依頼者と決める考え方は、AI事務の副業の始め方|受ける前に依頼主と決める7つの取り決めと確認先で整理しています。

一次情報とは何か:探す順番と使い分け

一次情報とは、その情報を作った機関や当事者が自ら公表した資料のことです。官公庁の統計・法令、企業が自社のサイトで出す発表などが当てはまり、解説記事やまとめ記事は二次情報にあたります。

リサーチで最初に当たる先は、一次情報です。二次情報は読みやすい反面、書き手の解釈が混ざり、元の資料が更新されても記事が古いまま残ることがあります。一次情報を先に確認し、必要なときに二次情報を「読み解きの補助」として使うと、資料の信頼性を保ちやすくなります。

依頼の分野によって当たる先は変わりますが、公的な資料では次の5種類がよく使われます。表は、何を調べるときにどこを見るかの目安です。

調べたい内容 最初に当たる一次情報 確認するときの注意
人口・産業・家計などの統計 政府統計ポータルサイトの e-Stat 調査の名称、調査時点、公表日を表ごとに控える
法律・政令・省令の条文 e-Gov 法令検索 どの法令のどの条かを特定し、条文を写すか要約するかを分ける
上場企業の有価証券報告書など 金融庁の EDINET 提出書類の種類と提出日を控える
企業の方針・サービス内容・料金 その企業の公式サイト ページの表題と取得日を控え、後で変わる前提で扱う
省庁・自治体の制度やガイドライン 所管する省庁・自治体の公式ページ 改訂日や版の表記を確認し、古い版を引かない

政府統計は、e-Stat(政府統計の総合窓口)が、日本の統計を閲覧できる政府統計ポータルサイトです。分野や組織から統計データを探せるため、「どの省庁が出している統計か」が分からないときの入口になります。法令はe-Gov 法令検索で、憲法・法律・政令・勅令・府省令・規則の内容を検索できます。

上場企業の開示書類については、金融庁がEDINETについてのページで、EDINETを「金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム」と説明しています。企業の財務や事業の内容を調べるとき、企業が自社サイトに載せた紹介文より先に、こうした開示書類の有無を確かめると、依頼者に示せる根拠が増えます。

企業の公式サイトや各省庁のページは、目次やサイトの作りが組織ごとに違います。探し方に決まった正解はないため、次の節で、見つけたページが「本当に発行元のもの」かを確かめる手順を紹介します。

探し方の手順:発行元・公表日・更新日を確かめる

探し方の手順とは、検索語を決め、候補のページを開き、発行元・公表日・更新日・版を確かめてから採用するかどうかを決める流れです。検索結果の上に出たという理由だけでは、採用の根拠になりません。

検索エンジンで調べるときは、まず探したい情報の「発行元の種類」を頭に置きます。統計なら省庁、制度なら所管官庁、会社の情報なら会社自身、というように、情報を作る立場の人が誰かを先に考えます。そのうえで、検索語に「省庁名」「制度名の正式名称」「資料の表題」を入れると、発行元そのもののページにたどり着きやすくなります。

候補のページを開いたら、次の順で確かめます。

  1. ドメインと運営者:ページを出しているのが、官公庁や当該企業そのものか。転載サイトや解説サイトではないか。
  2. 表題と発行元の表記:ページ内に、資料の正式な表題と発行元の名称が書かれているか。
  3. 公表日・更新日:いつ出された資料か、改訂されていないか。日付の表記がないときは、その旨を資料に書き残します。
  4. 版と対象:制度やガイドラインには改訂があります。依頼者が知りたいのは現行の版か、過去の時点の版かを確かめます。
  5. 本文の該当箇所:使いたい記述が、ページのどの見出しの下にあるか。後から探し直せるよう、見出し名を控えます。

PDFで公表されている資料は、ページ番号も控えておくと、依頼者が元資料で照合するときに助かります。ページ番号と見出し名が分かれば、長い資料でも該当箇所に迷わずたどり着けます。

一次情報が見つからないときは、見つからなかった事実そのものを資料に書きます。「官公庁の公式ページでは、この点を直接説明する資料を見つけられなかった」という記述は、依頼者にとって有益な情報です。代わりに二次情報で補う場合は、二次情報であること、書き手が誰か、元の資料にたどれるかを明記します。

生成AIに任せる工程と人が行う工程の分け方

生成AIの役割分担とは、要約・言い換え・表への整理・抜け漏れの指摘のような「文章を扱う工程」をAIに補助させ、情報源の選定・事実の確認・採否の判断・納品は人が行う、という線引きです。

生成AIは、長い文章の要点整理や、表の作成、文面の言い換えに向いた道具です。一方で、後述するとおり、AIは事実と異なる内容を出力することがあります。そのため、リサーチ業務では「AIに調べさせる」のではなく、「人が選んだ一次情報を、AIに整理させる」という順序にします。

工程 生成AIの役割 人の役割
情報源の選定 使わない 発行元・公表日を確かめて採用する資料を決める
資料の読み取り 人が選んだ資料の要約や、該当箇所の抜き出しを補助する 抜き出された箇所が原文にあるかを開いて確かめる
表・一覧への整理 項目ごとの表に並べ替える下書きを作る 各セルの値を原文と照合する
文面の整え 依頼者向けの読みやすい文章への言い換え案を作る 意味が変わっていないか、断定が強くなっていないか読む
抜け漏れの確認 依頼の確認項目に対して、未記入の箇所を指摘する 指摘を受けて、追加で調べるかを決める
採否・納品 使わない 最終稿を確認し、依頼者へ納品する

この表で大切なのは、AIの出力を「そのまま資料に入れない」点です。AIが出した要約は、あくまで人が原文と見比べるための下書きです。見比べた結果、原文と一致した文だけを資料に残し、一致しない文や、原文に見つからない記述は削ります。

仮の例として、省庁の公表資料から要点を整理する作業を考えます。秘書は、先に省庁のページを開いて資料の表題と公表日を控えます。資料の本文をAIに読み込ませるときは、「資料の中から、この項目に関する記述を、原文のまま抜き出してください。見つからない場合は『該当なし』と書いてください」と指示します。返ってきた抜き出しを、自分で原文の該当箇所と照らし合わせ、一致した部分だけを資料の本文に使います。この手順なら、AIが原文にない内容を付け足していても、照合の段階で気づけます。

生成AIの誤りに備える:各社公式ページの記述と確認の型

ハルシネーションとは、生成AIが事実と異なる内容や、与えた文脈と食い違う内容を、もっともらしい文章として出力する現象です。各社の公式ページも、出力を人が確認する必要を前提にしています。

生成AIの誤りについては、各社が公式ページで説明しています。Anthropicの開発者向けドキュメント「Reduce hallucinations」では、最も高度な言語モデルでも、事実として誤った文章や、与えられた文脈と食い違う文章を生成することがあり、この現象が「ハルシネーション」と呼ばれていると説明されています。同じページには、軽減する方法として、分からないと答えてよいと明示的に許可すること、長い文書では先に原文の引用を抜き出させること、回答の各主張に引用や出典を付けさせ、裏付けとなる引用が見つからない主張は取り下げさせること、が挙げられています。

GoogleのGemini アプリの回答についてでは、Geminiが「ハルシネーション」を起こし、不正確な情報を事実と錯覚して提示することがあると説明されています。同じページには、人物に関する不正確または不適切な情報が含まれることがあるため、回答を再確認するように、という案内もあります。また、Gemini アプリの関連ソースを表示するのページでは、すべての回答に関連リンクやソースが含まれるわけではないと説明されています。ソースの表示がないことは、確認作業を省いてよい理由にはなりません。

これらの公式ページから、リサーチ業務に使える確認の型を3つ取り出せます。1つ目は、AIに「分からない」と答える余地を与えること。2つ目は、AIの要約や数値に対して、原文の該当箇所を引用で示させること。3つ目は、出典を示せない記述を、資料から外すことです。いずれも、最終的に人が原文を開いて確かめる手順とセットで使います。

確認の手順を、次のように決めておくと、毎回迷いません。

  1. AIが示した記述ごとに、元の資料のページ・見出しを特定します。
  2. その見出しの下を実際に開き、記述が原文に存在するかを読みます。
  3. 数値・日付・固有名詞・条件(対象者や適用範囲)は、原文と1字ずつ見比べます。
  4. 原文に見つからない記述は、資料から削ります。残す場合は、自分の見解として別に書きます。
  5. AIの出力がどこまで資料に反映されているかを、確認状況の欄に書き残します。

各社のサービスは更新されるため、ここで紹介した記述は取得時点のものです。実際に使うときは、使っているAIサービスの公式ページを開いて、最新の説明を確かめてください。

依頼者の情報をAIへ入力するときの線引き

AIへの入力の線引きとは、依頼者から預かった資料や、個人が特定できる情報を、AIサービスに入力してよいかを事前に依頼者と決め、許可の範囲外は入力しない、という取り決めです。

リサーチ業務では、依頼者の社内資料、取引先の名前、顧客に関する情報などを受け取ることがあります。これらをAIサービスへ入力すると、情報が外部のサービスへ渡ります。入力した内容がサービス側でどう扱われるかは、サービスごとの利用規約や設定によって異なるため、入力してよいかどうかを秘書が自分の判断で決めてはいけません。

個人情報保護委員会は、生成AIサービスの利用に関する注意喚起等についてのページで、生成AIサービスの利用に関する注意喚起等を行っています。個人情報を扱う業務でAIを使う場合は、この注意喚起の内容も確認してください。また、個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」に関するQ&Aでは、委託に伴って委託元から提供された個人データについて、委託先は委託された業務の範囲内でのみ取り扱わなければならないと説明されています。秘書が依頼者から資料を預かる立場である以上、依頼された業務の範囲を超えて資料を扱わないことが前提になります。

実務では、次のような運用が取り入れやすい方法です。

  • 依頼を受けた最初の確認で、「依頼者の資料をAIサービスに入力してよいか」を聞き、返事を文章で残します。
  • 許可がない場合は、公開されている一次情報だけをAIに読ませます。依頼者の資料は人が読み、AIには使いません。
  • 許可がある場合でも、氏名・連絡先・顧客の情報など、調査の目的に不要な部分は伏せてから入力します。
  • どのAIサービスを使ったか、何を入力したかを、納品物とは別の作業記録に残します。

公開されている官公庁の資料だけを調べる依頼であれば、入力の問題は小さくなります。それでも、依頼者が「AIは使わないでほしい」と希望していることがあるため、利用の可否は毎回確認します。依頼者の資料を預かる際の保存や破棄のルールについては、請求書や領収書を扱う場合を例に、AIで請求書・経費精算の事務を進める手順|任せる範囲と確認箇所・保存のルールでも触れています。

参照元の書き方と取得日の残し方

出典の書き方とは、発行元・資料の表題・URL・公表日または更新日・取得日・確認状況を、一定の形式で並べて記載する方法です。形式を決めて毎回そろえることで、依頼者が照合しやすくなります。

出典の書式に唯一の正解はありませんが、読み手が元の資料に戻れる情報を欠かさず、資料全体で書き方をそろえることが大切です。次の表は、資料に載せる出典欄の型を、種類ごとに示したものです。表の「記入例」は、書式を示すための仮の例で、実在する資料の情報ではありません。

資料の種類 書く内容 記入例(仮の例)
Webページ 発行元、ページの表題、URL、更新日の表記、取得日 発行元の名称/ページの表題/URL/更新日の表記/取得日
PDF資料 発行元、資料の表題、URL、公表日、該当ページ、取得日 発行元の名称/資料の表題/URL/公表日/該当ページ/取得日
統計表 統計の名称、表の名称、調査時点、公表日、URL、取得日 統計の名称/表の名称/調査時点/公表日/URL/取得日
法令の条文 法令の名称、条番号、URL、取得日 法令の名称/条番号/URL/取得日
AIを使った要約 元の資料の出典、AIの使用の有無、人が原文と照合したか 元の資料の出典/AIの使用あり/原文との照合済み

取得日が重要な理由は、Webページの内容が後から変わるためです。企業の公式サイトの料金や製品の説明、官公庁のガイドラインなどは、改訂されることがあります。取得日を残しておけば、依頼者が後日ページを開いて内容が違っていたときに、「資料を作った時点ではこの内容だった」と説明できます。

出典欄は、資料の末尾にまとめて載せる方法と、各項目の直後に載せる方法があります。依頼者が項目ごとに根拠を確認したい場合は、直後に載せる方式が向いています。一方、読み物のように通して読んでもらう資料では、本文中に番号を振り、末尾の一覧で対応させる方式が読みやすくなります。どちらにするかは、最初の確認で資料の形を聞くときに、あわせて決めておきます。

数値を載せるときは、数値だけでなく、単位と、その数値が何を指すか(何の調査の、いつ時点の、どの範囲の値か)も書きます。「増えている」「多い」のような評価の言葉は、根拠となる数値と、比較の相手が示せるときだけ使います。比較の相手が示せない場合は、数値をそのまま並べ、評価は依頼者に委ねます。

著作権の引用ルール:資料に他者の文章を載せるとき

引用とは、報道・批評・研究などの目的で、公表された他人の著作物を、正当な範囲で自分の資料の中に利用することです。公正な慣行に合致し、分量や主従関係が適切で、出所を明示するといった条件が問われます。

リサーチ資料では、公式ページの文言をそのまま載せたい場面があります。他者の文章を自分の資料に載せる際の考え方は、文化庁著作権課の講習会資料「著作権制度の概要について」(令和6年度 著作権事務担当者講習会)に整理されています。この資料の「権利制限規定②引用」の項では、引用して利用するための条件として、次の内容が示されています。

  • 公表された著作物であること(未公表の著作物は対象外)。
  • 公正な慣行に合致すること。引用の「必然性」があること、引用する部分が「明確に区別」されること。
  • 引用の目的上「正当な範囲内」であること。自分の著作物と他人の著作物との間に妥当な「主従関係」があること、引用する分量が必要最小限度の範囲内であること。
  • 「出所の明示」が必要であること(複製以外はその慣行があるとき)。

同じ資料には、近年の判例では、これらの判断基準によらず、引用する目的、引用の方法・態様、著作権者に及ぼす影響の程度等を総合的に考慮した上で判断しているものもある、という記述もあります。つまり、4つの条件を形式的に満たしたかどうかだけで、適法かどうかが決まるわけではありません。

リサーチ資料に当てはめるときは、次の運用にすると、条件に沿った形に近づきます。

  • 自分の文章が主で、引用は補助にします。引用が資料の大半を占めないようにします。
  • 引用する部分は、かぎ括弧や引用用の枠で、自分の文章と見分けられるようにします。
  • 引用は、その主張に必要な最小限の部分にとどめます。
  • 引用の直後に、発行元・資料の表題・URL・取得日を添えて出所を示します。
  • 原文を書き換えず、そのまま写します。要約する場合は、引用ではなく自分の言葉の要約として書き、出典を添えます。

生成AIの出力を資料に使う場合の著作権の考え方については、文化庁がAIと著作権についてのページで、令和6年3月に文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会が「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめたことと、関連文書を紹介しています。AIが作った文章を依頼者の資料に使う場面で判断に迷うときは、このページの資料を確認し、必要に応じて依頼者や専門家に相談してください。個別の事案に対する法的な判断は、この記事では行いません。

納品物の形:仮の例で見る出典付き調査メモ

出典付き調査メモとは、依頼の要点、調べた結果、各結果の出典、確認状況、調べきれなかった点を1つの資料にまとめた納品物です。依頼者が結論の根拠を自分で確かめられる形になっていることが条件です。

ここでは、仮の依頼を例に、納品物の形を示します。この例は読み方を示すための仮の例で、実在する依頼や資料ではありません。数値は載せず、書式の見本として使ってください。

仮の依頼は、「地域の催しを企画する前に、対象地域の人口構成に関する公的な統計を確認し、資料にまとめてほしい」というものです。目的は企画会議での参考資料にすること、読み手は依頼者と同僚、情報源は官公庁の統計に限る、という合意を最初の確認で得ているとします。期限と資料の形式も、同じ確認の中で依頼者と決めたものとします。

項目 調べた内容の書き方 出典の書き方 確認状況の書き方
調査の名称と対象 統計の名称、対象地域、調査時点を1行で書く e-Statの該当ページの表題とURL、取得日 原文の表題と照合済み
知りたい数値 表の名称と、数値の意味・単位を書く(数値は原表のまま転記) 統計表の名称、公表日、URL、取得日 転記した数値を原表と見比べ済み
解釈の注意 調査の対象範囲や、比較できない場合の条件を書く 統計の説明ページ、取得日 説明ページの文言と照合済み
調べきれなかった点 公的な統計で見つからなかった事柄を、見つからなかったと書く 探した資料の一覧 追加調査の要否を依頼者に確認

納品物の冒頭には、依頼の確認内容(目的・範囲・使った情報源・AIの利用有無)を数行で書きます。続けて、結論に相当する要点を2〜3文で示し、その下に上の表のような詳細を並べます。要点だけを読めば全体が分かり、詳細を読めば根拠を確かめられる構成です。

末尾には、「この資料でできないこと」を書きます。たとえば「この資料は公表された統計の整理であり、企画の成否を示すものではありません」のように、資料の範囲を明示します。範囲が示されていると、依頼者が資料を過大に受け取ることを防げます。

調べきれなかった点は、隠さずに書きます。「公的な統計では、この観点のデータを見つけられなかった」という報告があれば、依頼者は別の手段(現地での聞き取りや、別の資料の追加依頼など)を検討できます。資料を完全に見せようとして空白を埋めるより、空白を空白として伝えるほうが、納品物の信頼性は高まります。

納品前チェックと差戻しへの対応

納品前チェックとは、資料を依頼者へ渡す前に、依頼の確認内容、出典、数値、AIの出力の扱い、引用の形式を、あらかじめ決めた順番で見直す作業です。自分の確認と、読み手の目線での確認の両方を行います。

納品前には、次の項目を順に確認します。チェックリストにしておくと、案件ごとに同じ水準を保てます。

  1. 最初に合意した目的・範囲・形式・情報源に沿っているか。
  2. 各記述に、発行元・表題・URL・日付・取得日の出典が付いているか。
  3. 数値・日付・固有名詞・条件が、原文と一致しているか。
  4. AIが作った文が原文と照合され、原文にない記述が残っていないか。
  5. 引用部分が自分の文章と区別され、出所が示されているか。
  6. 調べきれなかった点と、資料でできないことが書かれているか。
  7. 依頼者の情報を、許可された範囲を超えて資料に載せていないか。
  8. URLを開いて、ページが実際に表示されるか。

数日置いてから読み直すと、書いた直後には気づかなかった誤りに気づきやすくなります。期限に余裕があれば、納品の前日に最後の読み直しの時間を取ります。余裕がないときは、依頼者の立場で「この資料を見て、自分は何を判断できるか」と自分に問い、判断に必要な情報が揃っているかを確かめます。

差戻しを受けたときは、指摘された箇所だけでなく、同じ型の誤りがほかにないかも探します。たとえば、ある数値の出典が古い版だったという指摘を受けたら、他の数値の出典の版も確認します。直した内容と理由は、依頼者へ簡潔に伝えます。どの箇所をどう直したかが分かると、依頼者は再度全体を読み直す手間を減らせます。

差戻しが重なる場合は、最初の確認が足りていなかった可能性があります。目的や範囲の認識がずれていないか、依頼者に改めて確認し、確認の内容を文章で残します。リサーチ業務で身につけたい力は、調べる速さより、確かめて残す習慣です。

よくある質問(FAQ)

Q1. リサーチ業務では、検索に生成AIだけを使ってもよいですか。
おすすめしません。各社の公式ページでも、生成AIが不正確な情報を出力することがあると説明されています。情報源は人が選び、AIは要約や整理の補助に使い、出力は原文と照合してから資料に載せてください。
Q2. 出典はどこまで細かく書けばよいですか。
読み手が元の資料にたどれることを基準にします。発行元、資料の表題、URL、公表日または更新日、取得日が基本です。PDFならページ番号、統計なら表の名称と調査時点も加えます。
Q3. 一次情報が見つからないときはどうすればよいですか。
見つからなかったことを資料に書き、探した範囲も添えます。二次情報で補う場合は、二次情報であること、書き手、元の資料にたどれるかを明記します。見つかったように見せる書き方は避けてください。
Q4. 公式ページの文章をそのまま資料に載せてもよいですか。
引用の条件を満たす形で載せることが前提です。文化庁の講習会資料には、公表された著作物であること、公正な慣行に合致すること、正当な範囲内であること、出所の明示が挙げられています。載せる分量は必要最小限にし、出所を添えてください。判断に迷うときは、専門家に相談してください。
Q5. 依頼者の資料をAIに入力してもよいですか。
依頼者の許可がある範囲に限ります。許可がなければ、公開されている一次情報だけをAIに読ませます。許可がある場合でも、調査に不要な個人情報は伏せてから入力し、使ったサービスと入力内容は作業記録に残します。
Q6. 取得日はなぜ必要ですか。
Webページは後から書き換わることがあるためです。取得日があれば、資料を作った時点の内容を説明できます。取得日と、ページに表示された更新日は別の情報なので、両方を書き分けてください。

まとめ:確かめられる形で渡すことが、リサーチ業務の核になる

オンライン秘書のリサーチ業務では、調べた内容に、発行元・表題・URL・公表日・取得日・確認状況を添え、依頼者が自分で照合できる形で納品することが核になります。この記事で紹介した流れを、順に振り返ります。

  • 依頼を受けたら、目的・読み手・範囲・期限・資料の形・情報源・AIの利用可否の7項目を最初に確認し、文章で残します。
  • 情報源は一次情報を優先し、発行元・公表日・更新日・版を確かめてから採用します。
  • 生成AIは、人が選んだ資料の要約や表への整理の補助に使い、出力は原文と照合してから資料に載せます。
  • 他者の文章を載せるときは、文化庁の資料が示す引用の条件に沿い、出所を明示します。
  • 納品物には、調べきれなかった点と、資料でできないことも書きます。

最初から全部を完璧にこなす必要はありません。まずは1件の依頼で、出典欄の書式をそろえるところから始めてみてください。依頼を受ける側の他の記事も、あわせて参考にしてください。カテゴリ受託実務と仕事の進め方では依頼を受けたあとの進め方の記事を、カテゴリ事務・経理のAI活用では事務作業をAIで進める手順の記事を読めます。

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