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AI事務の副業の始め方|受ける前に依頼主と決める7つの取り決めと確認先

AI事務の副業を始めるとき、最初に決めるのは使うツールではなく、依頼主との取り決めです。具体的には、本業のルールで副業ができるか、頼まれる作業の範囲、AIを使ってよい場面とその伝え方、扱う情報の範囲、納品前に誰が確認するか、アカウントや共有フォルダの権限、報酬と支払期日の7つを、仕事を受ける前に言葉にしておきます。これらが曖昧なまま始めると、作業そのものよりも「そこまで頼んだつもりだった」「AIを使うとは聞いていない」といった食い違いの対応に時間を取られやすくなります。

この記事は、オンライン秘書や事務代行の仕事をAIを使いながら在宅で受けたい人が、最初の依頼を受ける前に何を確認し、何を依頼主と文章で合意しておくかを順に整理します。副業と本業の関係は厚生労働省の副業・兼業のページ、フリーランスとして受ける取引の条件は公正取引委員会のフリーランス法の特設サイトと厚生労働省の自営型テレワークのガイドライン、個人情報は個人情報保護委員会の注意喚起を、それぞれ一次ページで確認できた範囲だけ扱います。

特定のAIツールの機能や料金、収入や案件数の目安には触れません。法律の適用や就業規則の解釈は個々の事情で変わるため、この記事は判断の材料を並べるもので、最終的な判断は勤務先の担当部署、依頼主、公的な相談窓口、必要に応じて専門家へ確認してください。

目次

受ける前に依頼主と決める7つの取り決めの全体像

AI事務の副業で先に決めるのは、本業のルール、業務範囲、AI利用の範囲、情報の扱い、確認者と納品基準、権限、報酬と支払期日の7つです。依頼主と合意した内容は、口頭ではなくメッセージや文書に残します。

7つの取り決めは、確認する順番にも意味があります。最初の本業のルールは、依頼主ではなく勤務先との関係なので、返事をする前に自分だけで確認できます。そのあとで依頼主に、頼む作業、AIの使い方、扱う情報、確認の流れ、権限、報酬を確認し、すべてを一か所の文書にまとめます。次の表は、取り決めごとに決める内容と、決めておかない場合に食い違いやすい点、確認先を一覧にしたものです。

順番 取り決め 決める内容 決めないと食い違いやすい点 主な確認先
1 本業の副業ルール 副業が可能か、届出や許可の手続があるか 始めてから勤務先との間で問題になる 勤務先の就業規則・労働契約
2 業務範囲 頼まれる作業、頼まれない作業、対応する曜日や連絡手段 追加依頼が際限なく増え、どこまでが契約内か分からなくなる 依頼主
3 AI利用の範囲と説明 AIを使う作業、使わない作業、依頼主への伝え方 使っていると知らされていない依頼主が後から不信感を持つ 依頼主、AIサービスの利用規約
4 情報の扱いと秘密保持 見てよい情報、AIに入力してよい情報、保存場所、終了後の扱い 個人情報や機密を入れてはいけない場面で入力してしまう 依頼主、個人情報保護委員会の資料
5 確認者と納品基準 誰が何を確認して納品とするか、修正の回数や期限 修正が終わらず、納品済みかどうかが曖昧になる 依頼主
6 アカウントと共有ドライブの権限 閲覧・編集・送信の範囲、招待の方法、終了時の取り消し 必要以上の権限を持ったまま、終了後も残る 依頼主、各サービスの権限設定
7 報酬と取引条件 報酬額、支払期日、支払方法、経費、契約変更の扱い 支払時期や追加作業の扱いで揉める 公正取引委員会・厚生労働省の資料

この表の7行は、以降の見出しでひとつずつ扱います。最初の依頼を受ける段階では、すべてを細かく詰めようとするよりも、「どの行についても、依頼主と同じ理解で始められているか」を点検する使い方が現実的です。最初の一業務の選び方については、オンライン秘書の仕事内容と最初に選ぶ一業務の考え方で、経験や時間、確認者の観点から整理しています。この記事は、その一業務を受ける直前に何を決めるかに絞っています。

本業の就業規則と契約を、返事をする前に確認する

会社員が副業を始めるときは、依頼主へ返事をする前に、勤務先の就業規則と自分の労働契約で副業が可能か、どんな手続が必要かを確認します。可否は会社によって異なります。

厚生労働省の副業・兼業のパンフレットは、すでに会社で働いている人が副業・兼業をできるかどうかは会社によって異なるとしたうえで、まず勤めている会社のルールを定めた就業規則や自分の労働契約の内容を確認し、可能かどうかと必要な手続を確認するよう案内しています。副業先が決まったら、会社が就業規則などで定めている方法にしたがって内容を届け出る、という流れも示されています。詳しくは厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン わかりやすい解説」と、資料をまとめた厚生労働省の副業・兼業のページで確認できます。

同じ資料には、副業・兼業を行ううえで、すでに行っている仕事に支障が生じないようにすること、そして、すでに行っている仕事と副業・兼業のそれぞれで知り得た業務上の秘密情報を漏らさないことに留意する必要がある、と書かれています。AI事務の副業では、依頼主の資料をAIに読ませる場面が出てくるため、この「秘密情報」の扱いは本業側にも依頼主側にも関わります。本業で扱う情報を、副業の作業に持ち込まないことを、自分のルールとして決めておくと安心です。

確認の仕方は、次の順序が現実的です。就業規則の副業に関する条文を探し、許可制か届出制か、禁止や制限の条件がどう書かれているかを読みます。条文が見つからない、読んでも判断できない場合は、人事や総務の担当者に、副業として業務委託の形で在宅の事務を受けることを想定して質問します。回答はメールなどの文字で残し、あとから「聞いていた」「聞いていない」とならないようにします。

資料によると、労働者が雇用される形で副業・兼業を行う場合は、原則として自社と副業先の労働時間を通算して管理する必要があるとされています。一方で、副業・兼業には、雇用される形のほか、自ら事業主として行うものや、請負や委任の形で行うものなど様々な形態があるとも書かれています。AI事務の副業を業務委託で受ける場合に労働時間の通算がどう扱われるかは、この資料だけでは判断できません。勤務先と、必要なら労働基準監督署などの相談窓口に確認してください。

確認すること どこで確認するか 記録の残し方
副業が可能か、許可制か届出制か 就業規則の副業・兼業に関する条文 条文の該当箇所を保存する
手続の方法と提出先 就業規則、人事・総務の担当者 届出の控えと提出日を残す
本業の業務に支障がないこと 自分の勤務時間と副業に充てる時間帯 作業する曜日・時間帯を決めて書き出す
本業で知った情報を持ち込まないこと 自分のルール、勤務先の情報管理の規定 副業用の端末・アカウントを分ける
業務委託の副業での労働時間の扱い 勤務先の担当者、公的な相談窓口 質問と回答をメールで残す

業務範囲を、できることと頼まれないことの両方で決める

業務範囲は、頼まれる作業の一覧と、頼まれない作業の一覧の両方を依頼主と合意して決めます。範囲の外にある依頼が来たときの扱いも、あらかじめ言葉にしておきます。

厚生労働省の自営型テレワークのガイドラインは、契約の際に交付する文書に、注文した仕事の内容や成果物の納期、納品先と納品方法などを明らかにすることを挙げています。口頭だけの契約では、報酬額や納期といった基本的な内容が不明確になったり、契約が一方的に打ち切られたりするなどのトラブルが少なくない、とも記載されています。仕事を受ける側も、受ける前にこの内容を知っておくことが望まれるとされており、業務範囲を文字で残す理由の裏づけになります。文言は厚生労働省「自営型テレワークの適正な実施のためのガイドライン」と、厚生労働省の自営型テレワークのページで確認できます。

範囲の決め方は、作業単位で書くのが分かりやすい方法です。たとえば「依頼主から届いた問い合わせメールに対する返信案の作成」「会議の日程候補の一覧作成」「議事の要点整理」のように、動詞で終わる粒度にします。「事務全般」「秘書業務」といった広い言葉だけでは、依頼主の頭の中の範囲と自分の範囲が重なる保証がありません。

次に、頼まれない作業を決めます。たとえば、依頼主の名前で外部へ送信する作業、金銭の支払いや契約の承認、税務や法律の判断を伴う作業などは、秘書として受けない、または依頼主の確認が済んだ後にだけ行う、と決めておきます。判断や承認は依頼主の仕事で、受ける側は、その判断のための材料をそろえる立場だと位置づけると、線引きが分かりやすくなります。

範囲の外の依頼が来たときの扱いも決めます。その場で断る必要はありません。「範囲外なので、別の依頼として内容と報酬を相談したい」と返せるように、追加の依頼は文字で受け、受けるかどうかを改めて決める流れにします。自営型テレワークのガイドラインでも、契約条件を変更する場合に不利益な変更を強要してはならないという考え方が示されており、頻繁な仕様変更が実質的な契約条件の変更になる場合にも触れられています。範囲外の追加依頼を、そのまま無償で受け続けない根拠としても役立ちます。

書く項目 書き方の例(仮の例) 書かない場合の問題
頼む作業 届いた問い合わせメールへの返信案を作る どこまでが作業か分からない
頼まない作業 依頼主の名前での外部送信は行わない 送信まで任されたと誤解される
対応の曜日・時間帯 平日の夜に作業し、翌日の昼までに返信する 即時対応を期待される
連絡手段 メッセージで依頼し、依頼内容は文字で残す 口頭の依頼で内容が残らない
範囲外の依頼の扱い 別の依頼として内容と報酬を相談する 追加作業が無償で積み上がる

AIを使ってよい範囲と、依頼主への説明を決める

AIを使う作業、使わない作業、AIを使った事実をどう伝えるかを、依頼主と合意して決めます。依頼主がAIの利用を望まない作業は、人の手で行います。

AIを使うかどうかは、受ける側が黙って決めることではなく、依頼主との取り決めに含めたほうが安全です。依頼主によっては、社内の規則や取引先との契約で、外部のAIサービスへの入力を制限していることもあります。受ける側が知らない事情があり得るため、「この作業では文章の整理にAIを使いたいが問題はないか」と先に聞く形にします。

決めておく内容は、作業ごとの扱いです。次の表のように、作業を「AIを使ってよい」「依頼主の許可があるときだけ使う」「使わない」の三つの区分に分けると、依頼主も判断しやすくなります。区分の基準は、入力する情報の性質と、間違えたときの影響の大きさです。

区分 当てはまる作業の例(仮の例) 理由
AIを使ってよい 公開済みの情報を整理する、文章の言い回しを整える 個人情報や機密を入力せずに済み、出力も人が確認する
許可があるときだけ使う 依頼主の社内資料の要約、顧客からの問い合わせ文の整理 入力する情報が依頼主や第三者の情報を含む
使わない 個人の連絡先や契約書の原文を扱う作業 入力そのものを避けたほうがよい情報を含む

AIを使った事実の伝え方も決めておきます。納品物に添えるメッセージに「この資料の整理にはAIを補助的に使い、内容は私が確認しています」と一文を入れる、といった形です。AIの出力は不正確な内容を含むことがあるため、人が確認したことと、最終的な判断は依頼主が行うことを、あわせて書いておきます。個人情報保護委員会の注意喚起でも、生成AIサービスの応答結果に不正確な内容が含まれることがあり、個人情報を扱う際にはそのリスクを踏まえて適切に判断するよう示されています。

利用するAIサービスの利用規約やプライバシーポリシーも、あらかじめ読んでおきます。同じ注意喚起には、生成AIサービスの利用者は、提供事業者の利用規約やプライバシーポリシーなどを十分に確認し、入力する情報の内容などを踏まえて利用を適切に判断することが、一般の利用者における留意点として書かれています。依頼主の情報を入力する前に、入力した内容がサービス側でどう扱われるかを自分で確認する、と決めておくのが基本です。文書は個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」で確認できます。

扱う情報と秘密保持の範囲を決め、AIに入れない情報を明記する

依頼主から預かる情報の種類、AIへの入力可否、保存場所、終了後の扱いを決め、秘密保持の取り決めとして文章に残します。個人情報は、依頼された業務の範囲内でだけ取り扱います。

情報の扱いは、副業の取り決めの中でも最も慎重に決める部分です。まず、依頼主から見せてもらう情報を種類で分けます。たとえば、依頼主自身の予定やメール、取引先の担当者名や連絡先、顧客の氏名や住所、契約や見積に関する資料、社内のみで共有している文書などです。種類ごとに、見てよいか、AIに入力してよいか、手元に保存してよいかを決めます。

個人情報については、個人情報保護委員会の質問と回答集が、委託先は個人データの取扱いの委託に伴って提供された個人データを、委託された業務の範囲内でのみ取り扱わなければならないという考え方を示しています。委託の内容と関係のない自社の営業活動などのために利用する場合が、範囲を超える例として挙げられています。副業で預かった連絡先や顧客情報を、依頼とは別の目的で使わないことを、自分への約束としても取り決めに入れておきます。出典は個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのQ&A」です。

AIへの入力については、個人情報保護委員会の注意喚起が、個人情報取扱事業者が本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを生成AIサービスに入力し、その個人データが応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合には、個人情報保護法に違反する可能性があると説明しています。そのため、入力する前に、提供事業者がその個人データを機械学習に利用しないことなどを十分に確認するよう示されています。依頼主の顧客情報のように第三者の情報を含むものは、入力の可否を自分だけで決めないことが大切です。迷う情報は、入力せずに依頼主へ相談します。

実務としては、次のように決めておくと運用しやすくなります。AIに入力する前に、氏名・住所・電話番号・メールアドレスなどの個人を特定できる部分を、依頼主が許可した場合を除いて取り除くか、入力しない作業に切り替えます。取り除く方法や、取り除いたうえで入力してよいかどうかは、依頼主の判断を仰ぎます。保存場所は、依頼主が指定した共有ドライブなどに限り、自分の端末の個人フォルダには残さない、と決める方法もあります。

情報の種類(仮の例) 見てよいか AIに入力してよいか 決めておくこと
依頼主の予定・日程候補 依頼の範囲で見てよい 依頼主が許可した範囲で 予定の公開範囲
取引先の担当者名と連絡先 必要な作業の範囲だけ 原則として入力しない 伏せ字にして入力する場合の扱い
顧客の氏名・住所など 依頼された作業に必要な場合だけ 入力しない 預かる期間と削除の方法
契約書・見積書の原文 依頼主が指定した場合だけ 入力しない 保存先と、閲覧できる人
公開済みの情報 制限なし 入力してよい 出典の控え方

秘密保持の取り決めは、依頼主が用意する書面がある場合はそれに従い、ない場合は、メッセージなどで「業務上知り得た情報を、依頼の目的以外には使わず、第三者へ開示しない」といった内容を確認します。終了後の扱いも一緒に決め、預かった情報を削除する時期と、削除したことの連絡方法まで合意しておきます。自営型テレワークのガイドラインも、契約条件として、業務上知り得た個人情報や注文者等に関する情報の取扱いを明らかにすることを挙げています。

確認者と納品の基準を決め、修正の進め方を合意する

納品前に誰が何を確認するか、どの状態を納品完了とするか、修正をいつまでどの方法で受けるかを決めます。AIが作った内容は、受ける側が最初に確認し、そのあと依頼主が確認します。

AIを使った事務では、出力に誤りが混じることを前提にした確認の流れが必要です。確認者は二段階に分けると整理できます。一段目は受ける側で、AIが出した内容を元の資料と照合し、数字、日付、固有名詞、宛名の誤りを探します。二段目は依頼主で、内容そのものが意図に合っているか、外部へ出してよいかを判断します。誰がどの段階を担当するかを決めずに納品すると、お互いに「相手が見ているだろう」と考えて誤りが残ることがあります。

自営型テレワークのガイドラインは、成果物の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日、つまり検収日を契約条件として明らかにすることを挙げています。また、成果物に不完全な点があった場合や納入が遅れた場合の取扱い、たとえば補修が求められる場合の扱いも契約条件に含まれています。さらに、成果物のイメージをできる限り具体的に共有し、過度な負担となる補修が繰り返されないよう、求める成果物の内容を具体的に説明することも示されています。納品基準を決める作業は、こうした考え方に沿ったものです。

納品基準は、チェックの項目で書くと、双方が同じものさしで確認できます。たとえば返信案の作成であれば、宛名と敬称が正しいこと、日時と金額が元の資料と一致していること、依頼主が指定した言い回しの条件を満たしていること、といった確認項目です。項目は少なくてよく、最初の依頼で使いながら、実際に起きた誤りを見て増やしていきます。

修正の進め方も決めます。修正の依頼を受けられる期間、修正の回数に上限を設けるかどうか、範囲を超える修正を追加の依頼として扱うかどうかを、先に合意します。最初のうちは回数を決めるのが難しいため、「納品後のひと月は軽微な修正に対応し、内容の変更は別の依頼として相談する」のように、期間と種類で決める方法もあります。ここでの日数や期間は一例で、実際の依頼に合わせて決めてください。

確認の段階 担当 見る内容(仮の例) 終えたことの示し方
一段目 受ける側 AIの出力と元の資料の照合、数字・日付・固有名詞の確認 確認済みの旨と、迷った箇所を添える
二段目 依頼主 内容が意図に合うか、外部へ出してよいか 承認の返信、または修正の依頼
納品完了 双方 確認項目がすべて満たされたこと 完了の連絡を文字で残す

アカウントや共有ドライブの権限は、必要な範囲に絞って決める

依頼主のアカウントや共有ドライブには、作業に必要な最小限の権限だけを付けてもらい、終了時に取り消す手順まで決めます。閲覧、編集、送信のどこまでを任されるかを分けて確認します。

依頼主のメールやカレンダー、共有ドライブへのアクセスを求められる場面は多くあります。そのとき確認したいのは、どのアカウントで、どの範囲の権限を、いつまで持つのかです。メールを読めるだけなのか、返信案を作れるのか、送信までできるのか、共有ドライブのどのフォルダを見られるのかを、種類ごとに区別して決めます。

基本の考え方は、作業に必要な範囲に絞ることです。たとえば、日程調整だけを頼まれるのであれば、カレンダーの予定の閲覧と編集があれば足りることがあります。その場合に、メール全体の閲覧権限まで付ける必要があるかどうかは、依頼主と一緒に考えます。権限が多いほど作業は進めやすい反面、誤操作や情報の流出が起きたときの影響が大きくなります。

アカウントの共有の仕方も決めておきます。依頼主のパスワードを自分に教えてもらう方法よりも、サービスが用意している招待や委任の仕組みで、自分用のアカウントに権限を付ける方法のほうが、誰がいつ何をしたかを分けて把握しやすくなります。使えるサービスや設定は種類によって異なるため、依頼主が使っているサービスの説明を確認してください。パスワードやログイン情報は、チャットの文面などに残さない扱いにします。

終了時の手順も、始める前に決めます。依頼が終わったときや契約を終えるときに、付けた権限を取り消す担当を決め、取り消したことを文字で確認します。共有ドライブに残っている自分のコピーや、AIサービスに入力した履歴の扱いも、情報の取り扱いの取り決めと合わせて確認します。権限の取り消しは、依頼主が行う場合と、受ける側が自分で退出する場合があるため、どちらが担当するかを決めておきます。

対象(仮の例) 求める権限 付けない権限 終了時にすること
カレンダー 予定の閲覧と、候補日の登録 他者の予定の削除 共有の解除を依頼主が確認する
メール 指定した受信箱の閲覧 依頼主名義での送信 委任や転送の設定を取り消す
共有ドライブ 指定したフォルダの閲覧と編集 フォルダ全体の削除、外部共有の設定 招待を外し、自分の手元のコピーを削除する
業務用チャット 指定したチャンネルへの参加 他のチャンネルの閲覧 参加を解除する

報酬、支払期日、取引条件を書面やメッセージで明示してもらう

報酬額、支払期日、支払方法、経費の扱い、契約条件の変更の扱いは、仕事を始める前に文字で明示してもらいます。口頭だけの合意で始めないことが基本です。

報酬に関する取り決めは、金額だけでなく、いつ、何を基準に、どの方法で支払われるかまで決めます。厚生労働省の自営型テレワークのガイドラインは、契約の際に交付する文書に、報酬額、報酬の支払期日及び支払方法、注文した仕事に係る諸経費の取扱いを含めることを挙げています。同じガイドラインは、報酬の支払期日について、成果物を受け取った日または役務の提供を受けた日から起算して30日以内、長くても60日以内としましょうと示しています。出典は厚生労働省の自営型テレワークのガイドラインです。

同ガイドラインは、契約条件を変更する場合の取扱いも明らかにする事項としており、受ける側に不利益が生ずるような変更を強要してはならないとしています。成果物を納品したあとの検収の期日、成果物に不完全な点があった場合の扱い、成果物に係る知的財産権の取扱いも、契約条件に含まれます。依頼主から文書が出てこない場合は、受ける側から、メッセージで条件を書き出して「この内容で間違いないか」と確認する方法もあります。

請求の流れも先に決めておきます。いつ請求書を出すか、請求書の形式を依頼主が指定するか、振込手数料はどちらが負担するかといった点です。請求書の作成と、記載事項や保存の考え方は、AIで請求書や経費精算の事務を進める手順の記事で、請求を受ける側ではなく事務を支える側の視点から整理しています。自分の報酬の請求書を出す場面でも、記載事項の確認の考え方は共通する部分があります。

この項目も、収入や案件数を保証する内容ではありません。報酬の水準は依頼主との合意によって決まるもので、この記事は金額の目安を示しません。決めた条件は、メッセージやメールを、契約や取引の証拠として残せるように保存します。自営型テレワークのガイドラインでは、注文者側に、交付した文書や電子メール等を3年間保存することが示されています。受ける側も、控えを同じ程度の期間は残しておくと安心です。

取引条件(仮の例) 決める内容 書き方の例
報酬額と算定方法 作業ごとの金額か、時間あたりの金額か 作業単位の金額を、依頼の都度メッセージで合意する
支払期日 起算日と、支払日 納品を受けた日を起算日にして、期日を日付で書く
支払方法と手数料 振込か、他の方法か、手数料の負担者 振込とし、手数料の負担者を明記する
経費の扱い 通信費やツール利用料を誰が負担するか 依頼主が指定したツールの費用は依頼主が負担する、など
契約条件の変更 変更の申出方法と、合意の方法 変更は文字で申し出て、双方の返信で成立とする
契約の終了 終了の申出時期と、終了時の精算 終了の希望は事前に連絡し、作業済み分を精算する

フリーランス法の対象になるかを、公正取引委員会の一次ページで確かめる

フリーランス法は、業務委託を受ける事業者で、従業員を使用しない人が対象です。依頼主が事業者として業務を委託する場合が当てはまり、消費者からの依頼は対象外と整理されています。

公正取引委員会のフリーランス法特設サイトでは、フリーランスを「業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの」と説明しています。対象となる取引は事業者からの委託で、たとえば消費者が家族写真の撮影を頼む場合のように、事業者からの委託ではない取引は対象外として示されています。つまり、副業として個人で事務を受ける場合でも、依頼主が事業者で、自分が従業員を使用していないときは、この法律の対象になり得ます。反対に、友人や家族など、事業としてではなく個人的に頼まれる手伝いは、対象にならない場合があります。当てはまるかどうかの最終判断は、特設サイトの案内や相談窓口で確認してください。出典は公正取引委員会 フリーランス法特設サイトです。

同じ特設サイトは、発注事業者に、業務委託をした場合には直ちに書面または電磁的方法で取引条件を明示することを求めると説明しています。明示すべき事項には、報酬額と支払期日などが含まれます。また、報酬の支払期日は、物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で定める、とも書かれています。発注側が従業員を使用しているかどうか、委託の期間がどの程度かによって、発注事業者に適用される義務の範囲は変わると整理されています。受ける側としては、「自分の依頼主が事業者か」「取引条件を文字で受け取れているか」を確認するのが入口になります。

厚生労働省の自営型テレワークのガイドラインも、自営型テレワーカーは、フリーランス法の「特定受託事業者」に該当することが多いと考えられる、と書いています。ただし、法人形態で行っている場合や他人を使用している場合などは自営型テレワークから除かれると定義されており、個々の状況で当てはまるかどうかは変わります。

確認する点 該当する場合に考えること 確認先
依頼主が事業者か 事業者からの委託であれば、法の対象となる取引になり得る 依頼主、特設サイト
自分が従業員を使用していないか 使用していない個人であれば、特定受託事業者に当たり得る 特設サイト
取引条件を文字で受け取っているか 受け取れていなければ、依頼主に明示を求める 特設サイト、ガイドライン
支払期日が定められているか 定めがなければ、期日を決めてもらう 特設サイト、ガイドライン

取り決めを一枚の合意メモにまとめる仮の例

7つの取り決めは、最初の依頼を受ける前に一枚のメモへまとめ、依頼主の返信で合意を残します。次の例は仮の内容で、実際の依頼に合わせて書き換えて使います。

ここまでの取り決めを、依頼主に送れる形のメモにしておくと、条件の確認が一回で済みます。以下は、日程調整と問い合わせメールの返信案作成を想定した仮の例です。実在の依頼主や実際の条件ではありません。そのままでは使わず、自分の依頼内容に合わせて、金額や期日、範囲を書き換えてください。

項目 メモの記載例(仮の例)
1 本業の確認 私の側で、勤務先のルールを確認したうえで受けます(依頼主への記載は、確認済みの旨のみ)
2 業務範囲 日程候補の一覧作成、届いた問い合わせメールへの返信案の作成。依頼主名義での送信と、金銭の支払い・契約の承認は行いません
3 AIの利用 文章の整理と返信案の作成にAIを補助的に使います。個人情報を含む部分は、許可がない限り入力しません
4 情報の扱い 預かった情報は依頼の目的だけに使い、第三者へ開示しません。終了後は、依頼主の指示に従って削除します
5 確認と納品 私が元の資料と照合し、確認した旨と迷った点を添えて納品します。承認は依頼主が行います
6 権限 カレンダーの閲覧と候補日の登録、指定フォルダの編集に限ります。終了時は双方で権限の取り消しを確認します
7 報酬と条件 報酬額、支払期日、支払方法、経費の扱いをこのメモに日付で記載し、変更は文字で合意します

このメモを送るときは、「記載の内容で認識が合っているか、ご確認をお願いします」と添えます。依頼主から修正や追加の希望が返ってきたら、それも文字で残して、最新の版がどれか分かるようにします。依頼主が独自の契約書や取引条件の書面を用意している場合は、そちらを優先したうえで、このメモの項目がすべて入っているかを突き合わせて確認します。足りない項目は、書面の追記や別途のメッセージで補ってもらいます。

始めてから取り決めを見直すタイミングと、断る・相談するときの伝え方

取り決めは一度決めて終わりではなく、依頼の内容が増えたときや、誤りが出たときに見直します。条件が合わないときは、理由と代替案を添えて断ります。

最初の依頼を終えたら、取り決めのどこが実際の作業と合っていなかったかを振り返ります。範囲の外の依頼が来た、AIの出力に誤りがあって確認項目を増やしたくなった、権限が足りなかった、あるいは多すぎた、といった出来事を、合意メモの該当する行に反映します。メモを更新したら、依頼主にも共有して、新しい版で合意しておきます。

見直すきっかけは、依頼の種類が増えたとき、扱う情報の種類が変わったとき、新しいAIツールや共有サービスを使い始めるとき、本業側で副業に関するルールが変わったときです。特に、扱う情報が変わったときは、AIに入力してよい範囲を最初から決め直します。

条件が合わない依頼は、断る選択肢も持っておきます。断るときは、理由を一つ添え、できる範囲があれば代替案を示します。たとえば「この作業は個人情報をAIに入力する必要があるため、今回は受けられません。公開済みの情報の整理であればお受けできます」といった伝え方です。相手を責める言い方を避けて、自分が守っているルールの説明として伝えると、関係を保ちやすくなります。

取引で困ったときの相談先も、あらかじめ知っておきます。フリーランス法に関する取引上の相談は、公正取引委員会の特設サイトに、違反の申出窓口が案内されています。副業と本業の関係は、勤務先の担当部署に加え、厚生労働省のパンフレットに相談窓口とセミナーの案内が載っています。どこに連絡できるかを知っておくだけでも、条件に納得できない場合の判断がしやすくなります。

起きたこと(仮の例) 見直す取り決め 見直しの方法
範囲外の依頼が続いた 業務範囲 頼まない作業の一覧に追記し、別の依頼として扱う手順を決める
AIの出力に誤りがあった 確認者と納品基準 確認項目を一つ増やし、誤りの種類を記録する
扱う資料に個人情報が増えた 情報の扱い AIに入力しない範囲を再確認し、依頼主に相談する
支払いが予定より遅れた 報酬と取引条件 支払期日を確認し、文字で連絡する
使うサービスが変わった 権限 必要な権限を見直し、不要な権限を取り消す

よくある質問(FAQ)

Q1. 本業が副業を禁止している場合、業務委託の事務なら問題ありませんか。
副業・兼業を行うことが可能かどうかは会社によって異なり、まず就業規則や労働契約の内容を確認するよう案内されています(厚生労働省のパンフレット)。業務委託の形であれば問題ない、とは言い切れません。就業規則の条文を読み、判断できない場合は担当部署に、業務委託の事務を受ける想定で質問してください。回答は文字で残します。
Q2. 依頼主にAIを使っていると伝えなければいけませんか。
伝え方の決まりが一律にあるわけではなく、依頼主との取り決めで決める事柄です。黙って使うと、依頼主の社内規則や取引先との契約に反することがあり得るため、使う作業と使わない作業を先に確認し、納品時にもAIを補助的に使ったことと、人が確認したことを一文で伝える運用をおすすめします。
Q3. 依頼主から預かった情報を、ツールの学習に使われない設定にすれば入力してもよいですか。
設定だけで判断せず、依頼主の許可と、サービスの利用規約やプライバシーポリシーの確認をあわせて行います。個人情報保護委員会の注意喚起は、提供事業者が個人データを機械学習に利用しないことなどを十分に確認するよう示しています。個人を特定できる部分は、許可がない限り入力しない扱いが基本です。
Q4. 契約書がなく、メッセージでやり取りしているだけでも副業として受けてよいですか。
メッセージでも、条件が文字で残っていれば確認の材料になります。ただし、報酬額、支払期日、業務範囲が書かれていない状態は避けたほうがよく、先に述べた合意メモをメッセージで送り、返信をもらう方法が使えます。フリーランス法の対象になる取引では、発注側に取引条件の明示が求められています。
Q5. 修正の依頼が何度も来て、作業が終わりません。どうすればよいですか。
合意メモに修正の期間と回数の扱いを入れていれば、それに沿って、範囲を超える分を追加の依頼として相談します。入れていない場合は、今回の修正の範囲を決め、次回以降は期間と種類を取り決めに加えます。成果物のイメージを先に具体的に共有しておくと、補修の繰り返しを減らしやすくなります。
Q6. 依頼主が個人で、事業としての依頼ではない場合はどうなりますか。
フリーランス法は事業者からの委託を対象とするため、個人的な依頼は対象外となる場合があります。その場合でも、業務範囲、情報の扱い、報酬と支払期日は、トラブルを避けるために同じように文字で決めておくことをおすすめします。対象になるかどうかは、公正取引委員会の特設サイトの説明で確認してください。

まとめ:受ける前に決めた取り決めを一枚に残し、実際の依頼で見直す

AI事務の副業を始める前に決めるのは、本業のルール、業務範囲、AIを使う範囲と伝え方、扱う情報と秘密保持、確認者と納品基準、権限、報酬と支払期日の7つです。本業のルールは、依頼主へ返事をする前に、自分で就業規則と労働契約を確認します。依頼主とは、作業単位の範囲、AIの利用区分、情報の扱い、二段階の確認、必要最小限の権限、報酬と支払期日を文字で合意します。

フリーランス法や自営型テレワークのガイドライン、個人情報保護委員会の注意喚起は、取り決めの項目を考えるときの手がかりになります。ただし、個々の取引への当てはめは状況によって変わるため、迷うときは公的な窓口や勤務先、依頼主に確認してください。最初の依頼を受けたら、実際に起きた食い違いを合意メモに反映し、見直しながら進めます。仕事内容の選び方はオンライン秘書の最初の一業務の選び方、依頼主との取り決めに関する記事は依頼主との進め方のカテゴリでまとめています。

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